バスシュティッヒ 感想文

バスシュティッヒ』- Was Sticht?
1993 年発売。対応人数 2 – 4 人。都合 1.0 時間。

とても変則的なトリックテイキングゲーム。言語依存は僅かにあり。(対策不要)

今回もトリックテイキングの説明については割愛する。Wikipedia を参照願いたい。

変則的なトリックテイキングゲームと言うと先の『トリックマイスター』が思い出されるが、このゲームは正統派なドイツのボードゲームの系譜にある。色々と実験的な要素が盛りこまれていて、それでいてきちんと機能していると感じたので個人的にはかなり良いゲームと思えた。

このゲームもプレイングカードは配りきり (厳密には、事前に全て公開される) なので、トリックテイキングで使える一般的なテクニックを利用する事が出来る。

さて、ゲームの仕組みについてだが一番特徴的だなと思えたのは、やはり “各人が全く別々の目的でトリックテイキングという一つの同じ土俵でゲームをプレイする” という部分だろうか。

分かりづらいゲームなので、今回はルールについて少し触れる事にする。

 1. 課題カードを選んで各人が順番に取っていく。(4枚)
 2. プレイングカードを各人が順番に取っていく。
 3. 課題を決める。
 3. トリックテイキングを行う。
 4. ラウンドを終了し、2 に戻る。

課題カードはそれなりの数のバリエーションがあり、例えば 1 トリックも取らないだとか特定色を取らないとか全員の中で最大数のトリックを取るとか、まー色々だ。条件が限定的ならば確実なので有利だが、同率が発生してしまうものであれば若干不利だろう。そんな事を考えながら選択していく。

ゲームの目的は、その取った課題カードを全て達成する事となる。

プレイングカードは、36 枚しかない。そのラウンドで親となるプレイヤーは、ランダムに選ばれた色の切り札と数字の切り札を事前に確認しておく。その後、カードを 4 列 9 行で並べて、上の行から順番に各プレイヤーはカードを 1 枚取っていく。1 行分の処理が終わったら、親だけがカードの強さを知っているので 1 行分つまり 4 枚でトリックテイクを行ったら誰が勝つかを宣言する。それを 9 回分行う事で自分の手札を作っていく。そう、いわゆるドラフトだ。子はどのカードが切り札であるかを推測しながらプレイングカードを取っていくのである。うーむ、わかりづらい。

ちなみに、先の課題カードとの兼ね合いがあるので強いカードを取る事が目的ではない事も留意する必要がある。反対に、親はなるべく切り札がばれないように動く必要がある。

課題を決める。これは手持ちの課題カードから好きなカード 1 枚伏せて同時公開する。ただし、親は事前に全てのプレイングカードの強弱を知っているため、課題カードを決める事が出来ない。公開された他のプレイヤーの課題カードを達成しつつ、その対象のプレイヤーの課題の達成を妨害する事が目的となる。

トリックテイキングをプレイする。これはごく一般的なトリックテイクだ。

ラウンド終了時に課題カードの状況を確認し次のラウンドに移る事になる。このときに全ての課題カードを達成したプレイヤーがいた場合ゲームは終了する。

まー、とても変わったゲームだし説明がややこしいゲームだ。駆け引きもそれなりにありゲームに慣れた人向けのゲームだろう。基本的なデザインは素直なので分かってしまえばルールに関してはどうと言う事は無いし、混乱を招く部分もほとんど無いだろう。というのも、ほとんど例外ルールがない良いデザインだからだ。細かな配慮も効いており、良くできたゲームだと思える。

一番初めに触れた部分に戻るのだが、基本的にトリック数を競うゲームではなく各人が別の課題に向かってトリックテイクを行うゲームなのだ。やっぱりとても変わったルールだと思う。

特に派手なコンポーネントもなく少々分かりにくいルールではあるのだが、ゲーム体験という観点では様々なゲームが持つ特性を上手く集約しており類い希なるセンスを私は感じた。ルールのつまみ食いとは違って、ゲームのひずみを感じなかったためであろう。得点計算にもそれは表れていて、納得感の高い得点方式を採用している。

基本的には情報戦のゲームであり、親は事前に完全情報を知っている。そこから様々な “渋い” 駆け引きが生まれ、とても一般的なトリックテイキングというゲームに収斂していくあたりは、妙なダイナミズムを感じさせるものがある。色々特別なルールを用意したが最終的な勝負の場は一般的なゲームで勝負というのは、とても複雑なジャンケンをプレイしているような錯覚を覚えた。それでいて、一つの整合性を保っているのも素晴らしい所だ。

ちなみに、私の所有しているものは『4 in 1』という amigo のセットになり、他のゲームも良いゲームが多いのでなかなか満足度の高いゲームだった。ただし、コンポーネントは汎用的なものを利用しているので取り立てて特別なところはない。

色々書いたがとても良いゲームだったし、作者はかなり賢い人だろうなとも思えた。


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